相続や事業承継で大切にしていること
相続や事業承継を考える時に、一番大切なこととは何?と聞かれたら何を思い浮かべますか?
僕は、迷わず
「人の気持ち」
と答えます。
ただ、この「人の気持ち」というのはクセモノです。普段、言葉に出てくる気持ちというのは、本心(本当の気持ち)でないことも多いです。相続や事業承継のお仕事の時に、必ず、当事者からヒアリングをすることになりますが、最初は本心は出てきません。
場合によっては、当事者の方が本心を忘れていることもあります。
昨日も、相続対策の案件で、依頼者である女性とそのお母様とお会いしてきました。
最初、お母様は、
「私たちの世代が亡くなった後のことはわからないから、みんなで話し合ってくれれば。。。」
とおっしゃっていました。ところが1時間もお話ししていると、最終的に誰に財産を渡したいのか、誰には渡したくないのかという明確な意思を話されました。
こういったことは、本当に良くあります。
(これは、就職の面接でも、従業員との面談などでもそうですよね。いきなり本心が出てくることってそんなにないですから。。。)
経験上、「こういうパターンになったら本心が出てくる」という王道のようなものがあると感じています。
それは、「昔話」です。昨日も、お母様の口から突然、昔話が始まったと思ったら、その出来事が起こった時に感じたこと、見えた景色などがどんどん思い出され、自分の気持ちを思い出しながら、確かめるようにお話しをされました。そして明確に
「私たちが住んできた自宅は、○○ちゃんが引き継いでくれたら嬉しい」
とおっしゃいました。
僕は、税理士をしているので、一応は法律の専門家ということになります。
なので、どうしても、相続や事業承継を法律に当てはめて考えてしまいがちなのですが、それだけだとうまくいかないことが多いのです。
「人の気持ち」さえ、まとまっていれば、たとえ法律に則っていなくても、相続や事業承継はまとまります。
・法律にそぐわない、一見、不公平に見える遺産分割であっても、相続人が納得して印鑑を押してくれればまとまります。
・法律上は、過半数の議決権を持っていない人でも、周りの人の気持ちを掌握している人であれば、会社を導いていくことも可能です。
逆に、法的には完璧に対応していても、「人の気持ち」がまとまっていないと、争いが長期化したり、時期を逸してしまったりすることもあります。
つまり、相続や事業承継では、「人の気持ち」と「法律」がいわば両輪のような形でバランスが取れていることが必要だと思います。
ただ、この「人の気持ち」。
普段はフタがされていて、本心は深いところにある可能性があります。
その本心を引き出すのが、質問であり、経験であり、信頼なのだと思います。
そういう意味で、相続・事業承継は奥が深く、やりがいある仕事だと感じています。
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